大学生時代にネパールが好きになって、ネパールでもっと時間をすごしたいと思い、留学を機に専攻もそれまでの法律から人類学に変えました。人類学というのは「政治」とか「農業」とか、ある限られた領域だけを見るのではなく、それらの領域を横断する様々な関係性を探求し、人間の生活を「全体的」にとらえようという指向性を持った学問だと考えてきました。しかし宗教学から生態学や工学までほんとうにいろいろなバックグラウンドを持つ地域研究者が集まるこの研究科に来てから、自分がヒマラヤや南アジア地域を研究するなかでまったく問うてこなかった問いに気づくことや、自分では重要な問題だと思っていたことが、じつは自分の所属していたごく小さなサークルのなかでだけ意味を持つ問いだったように思えてくることがよくあります。ここで学ぶ人たちにはフィールドの経験を通し、またさまざまな教員や大学院生との交流を通して、それまであたりまえだと思っていたことが不思議に思えてきたり、考えたこともなかった問いに出会ったりという経験をしてもらえればと思います。