推奨テーマ

推奨テーマ2021

平和共生・生存基盤論講座

中溝 和弥 教授(南アジア・インド洋世界論講座兼担)
  1. 暴力の連鎖をいかに断ち切るか
    2001年に始まった「テロとの戦い」は、イスラーム国の出現に顕著に見られるように、終わりなき暴力の連鎖を生み出している。いかにしてこの悪循環を食い止めるか。人類が未だ解決し得ないこの問題は、容易に答えが見つからない故に、生涯をかけて研究する価値がある。南アジアを起源とする非暴力主義の思想と運動はひとつの手がかりとなるだろう。
  2. 新しい排外主義
    欧米において移民排斥の動きが新たな高揚を迎えているが、自らの社会にとって「異質」と見なす人々を排斥する動きは、世界各地で起こっている。ヒト・モノ・カネ・情報の加速的な移動を可能にしたグローバル化の進展と密接に結びついていると考えられるが、なぜこのような現象が起こるのか。この理由を解明し、平和的に共生する途を探る研究が、今求められている。
  3. 貧困と格差
    21世紀を迎えて、結局人類は豊かになったのだろうか。グローバル化の進展は、BRICsに代表される新たな新興国を生み出した。しかし、その一方で格差の拡大が指摘されている。例えばインドはグローバル化の「勝ち組」と目される国であるが、膨大な貧困層を依然として抱え、格差の拡大も問題となっている。いかにして貧困と格差を解消していくか。現代世界の喫緊の課題と言えよう。
河野 泰之 教授
  1. 人とモノの動きから見る東南アジアと中国のインタラクション
    東南アジアと中国の関係が急速に緊密化しています。マスコミで報道される政治や経済に関してのみならず、草の根レベルでの人やモノの動きからも読み取れます。それが東南アジアの農林水産業や自然資源利用、そして環境保全にも大きなインパクトを与え、東南アジアの自然と社会に新たなダイナミズムを巻き起こしています。
  2. 大規模農業開発の社会的・生態的インパクト
    経済のグローバル化は東南アジア農業を大きく変えようとしています。これまでの小農を中心とする農業発展から、大規模資本による先端技術を活用したグローバル市場向けの農業への転換です。この転換が社会や環境にどのような影響を与えているのか、人々はどのように対応しようとしているのかを検討することにより、グローバル化をより複眼的に考えることができるでしょう。
  3. 東南アジア農村の生活・生業の長期動態から考える生存基盤の変容
    豊かだがときに災害をもたらす自然環境、対立しながらも共存する民族や宗教、脆弱なガバナンスと向き合いながら生活と生業を維持・発展させてきた東南アジア農村において、人々の生存の根幹を支える基盤は何なのか、それはどのように変容しつつあるのかを読み取ることにより、社会発展のあり方をより幅広い視野から考えましょう。
長岡 慎介 教授(イスラーム世界論講座兼担)
  1. イスラーム経済のグローバル・ネットワーク
    現代イスラーム経済の実践は、イスラーム法学(学者、学派)、イスラーム経済学(大学、研究所)、実務(企業グループ)、政策(国際組織)などの多様なネットワークによって支えられています。イスラーム世界の内外に張り巡らされたそれらのネットワークの実態と独自性を、地域をまたいだフィールドワークによって解明します。
  2. アジアおよびイスラーム世界の新興経済発展諸国における独自の発展径路
    めざましい経済発展を続けるアジアおよびイスラーム世界の各国は、これまでの近代資本主義型経済とは異なる発展径路を模索しています。特に近年成長著しいトルコ、インドネシア、中東産油国における独自の経済発展の実態と地域的特徴を解明します。
  3. アジアから考える次世代経済システム
    経済格差や貧困、環境問題など資本主義の弊害がいたるところで見られる今、アジアで育まれてきたローカルな経済知のグローバルな可能性に注目が集まっています。よりよい次世代の地球社会を構想するために、こうした経済知をどのように私たちの社会に活用・応用できるかを解明します。

イスラーム世界論講座

東長 靖 教授
  1. 神秘主義比較研究
    スーフィズムはイスラーム神秘主義と訳されています。他方、世界のさまざまな文明にも神秘主義が存在しています。日本でいえば、密教や禅などがよく神秘主義の代表格として語られますし、キリスト教やユダヤ教、ヒンドゥー教などにもそれぞれ神秘主義が存在します。それらはどういう共通点とどういう相違点をもつのでしょうか。そのことを、スーフィズムを軸としながら考えます。
  2. ズフド(禁欲主義)研究
    スーフィズムの前段階として語られるものにズフドがあります。しかし禁欲主義は、スーフィズムの前段階であるだけでなく、スーフィズムの倫理的側面の論理的支柱ともなっています。世界でもまだあまりなされていない、困難だけれど挑みがいのあるテーマです。
  3. タリーカ分析概念構築研究
    タリーカは、スーフィー教団・イスラーム神秘主義教団とよく訳されていますが、これが十全にタリーカの実態を表しているのかについては、すでにさまざまな疑義が呈されています。あくまで個別タリーカの実証的研究に基づきながら、そもそもタリーカとは何という分析概念を問う意欲的な研究分野です。
帯谷 知可 准教授
  1. ソ連解体後の中央アジアまたはコーカサスの社会変容
    1991年のソ連解体と中央アジア、コーカサス諸国の独立以降、政治的には民主化、経済的には市場経済への移行という大変革を経験し、一方でグローバリゼーションの波にさらされる中、いかなる社会変容が生じているか。
  2. 中央アジアまたはコーカサスの現代政治
    社会主義体制崩壊後、中央アジアとコーカサスでは概して権威主義体制が強化される傾向にあるが、その要因と特徴は何か。民主化や市民社会の形成・成熟はどの程度実現されているか。
  3. 中央アジアまたはコーカサスのイスラームとジェンダー
    社会主義的近代化の過程で公には「悪しきもの」として退けられてきたイスラーム的伝統や家父長制的ジェンダー・家族規範は、決して根絶されたわけではなかった。それらを他者のものとして排除することなく、現代の文脈に位置づけ直すにはどうしたらよいか。

南アジア・インド洋世界論講座

藤倉 達郎 教授
  1. 南アジア及びヒヒマーラヤ地域におけるインフラ(電力、道路、上下水道、廃棄物処理)や資源利用(コミュニティー・フォレストリー等)についての文理融合的研究
  2. 農業、食文化と社会政治変容(有機農業の興隆、菜食化と肉食化、牛保護運動、インスタント・ラーメン市場の拡大、レシピの変化等)
  3. 記憶をめぐる問題群(場所、移動、痛み、死、弔い、亡霊、夢等)
  4. 医療と身体(ローカルな治療実践(シャーマニズム、占星術、traditional bone-setters、traditional birth attendants等)、近代医療の展開、Trans-cultural medicine 等
  5. 文化多元主義、反差別運動、先住民の権利運動、文化復興運動、宗教復興、re-tribalization等
稲葉 穰 教授
  1. フロンティアとアフガニスタン内戦
    すでに40年近くにわたって内戦、内紛を繰り広げているアフガニスタンにおいて、諸勢力の対立や、過激な宗教主義がどのように生み出され、いかに展開してきたのか。そしてそのプロセスに、歴史的にインドとイラン、中央アジアを互いに隔ててきたこの地域の特性はどのように関連を持っているのか。これらを解明することは他所における類似の紛争について考察する鍵を与えるだろう。
  2. アジアの山岳地域の社会と文化
    東南アジアから南アジア北辺を経てアフガニスタン、イラン北部、コーカサス山脈へと続く東西の大山岳地帯の鎖は、それぞれの地域において独自の文化を営む社会を育んできた。このような山岳地帯の社会は、広い平野と農耕地を有する平地社会とどのような対立関係、優劣関係、協調関係を取り結んできたのか。特に各地においてしばしば反政府運動の根城となる山岳地域を包括的に考察することはアジアの政治動静を理解する新たなきっかけになるだろう。
中村 沙絵 准教授
  1. スリランカの社会文化・政治経済
    スリランカで暮らす多様な集団・人々の生活世界への理解にもとづきながら、例えば内戦終結後のスリランカ社会における亀裂・分断と共存の問題について、分野横断的な視点から模索する。
  2. トランスナショナルな人の移動と親密圏の再編過程
    出稼ぎやディアスポラなど、トランスローカル/ナショナルな移動に伴い、家族やジェンダー、ケアをめぐる関係性がいかに再編されているのか、ミクロ-マクロの視点を往復しながら考察する。
  3. 「社会的苦悩」に関する地域内在的/グローバルな対応
    災害や紛争、疾病や貧困など、あらゆる背景において生じる「社会的苦悩」について、地域社会やグローバルな諸アクター(研究者自身も含む)がこれに如何に対応しようとしているのか、その実態と課題を明らかにする。
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