鶴田 星子(南アジア・インド洋世界論講座)
「寝台列車での出会い」
9月のとある夕暮れ時、インド西部マハーラーシュトラ州プネー県より東へ約600km先へ向かう長距離寝台列車に乗った時のことでした。私は連れの先生と同じ車両に乗ることができず、到着までの14時間、何事もなく過ごせるだろうか(睡眠強盗って本当にあるのだろうか・・・)と不安になっていました。周りの人たちにじろじろ見られるのも落ち着かない理由の一つでした。しかしそのような状況の中、一人の女の子が恥ずかしそうに話しかけてきました。
「お姉ちゃんはどこから来たの?」――お父さんの後ろから、習いたての英語でもじもじしながら話しかけてくる女の子――。その愛らしさに、気が付くとこちらも笑顔になっていました。私は日本から来て、これからワルダー県に調査に行くこと、女の子の家族はワルダー県より一つ向こうのナーグプル県に住んでいて、プネー県にあるお母さんの実家を訪ねにきていたことなど、話は尽きることなく、気が付けば車両の人みなが会話に交じっていました。私が片言のマラーティー語(現地の言葉)を話すとみな大盛り上がり!
今回の調査は当初、飛行機で移動する予定でした。長距離のつらい移動になり、よく眠れなかったにも関わらず、またこの寝台列車に乗って移動するのもいいな、そんな風に思わせてくれた素敵な出会いでした。
【「アジア・アフリカ地域研究情報マガジン」第162号(2016年12月)第127回「メルマガ写真館」より引用】